多くのタスクがある場合、自動テストが使用され、実際のプロジェクトでも広く利用されています。
なぜテストが必要なのでしょうか?
関数を書くとき、どのパラメータがどのような結果をもたらすかといった、関数がすべきことをイメージできます。
開発中、私たちは関数を実行し、その結果を期待される値と比較することで関数のチェックが行えます。例えば、コンソール上でそれを行うことができます。
もし何かが間違っていたら – コードを直し、再度実行し結果を確認 – を期待通り動くまで繰り返します。
しかしそのような手動の “再実行” は十分ではありません。
手動による再実行でコードをテストする場合、何かを簡単に見逃してしまうことがあります。
例えば、関数 f を作っています。ある程度コードを書き、テストします: f(1) は動きますが、f(2) は動きません。コードを直すと f(2) が動くようになります。が、これで完璧でしょうか? f(1) の再テストを忘れており、このケースがエラーになるかもしれません。
これは非常に典型的なパターンです。何かを開発するとき、私たちは多くのユースケースの可能性を心に留めています。しかし、何かの変更のたびに、すべてのユースケースのチェックを手動で行うことをプログラマに期待するのは困難です。このため、あるものを修正して別のものを壊すことが容易に起こり得るのです。
自動テストとは、コードとは別にテストを記述することを意味します。これにより、関数はさまざまな方法で実行され、期待される結果との比較が行われます。
ビヘイビア駆動開発(BDD)
ビヘイビア駆動開発,もしくは BDD と呼ばれるテクニックを使ってみましょう。そのアプローチは多くのプロジェクトで使われています。なお、BDDは単なるテストについてのものではありません。それ以上です。
BDD には3つのことがあります。テスト、ドキュメント、そして例です。
BDD を理解するために、実際の開発ケースを検討していきましょう。
“pow” の開発: spec
x の n 乗をする関数 pow(x, n) を作りたいとしましょう。n≥0 と仮定します。
このタスクは例です: JavaScriptには同様のことを行う ** 演算子がありますが、ここではより複雑なタスクに対しても同様に適用が可能な 開発フロー に集中します。
pow のコードを作成する前に、関数が何をすべきかを考え、それを記述します。
このようなことに関する記述は specification(仕様)、もしくは spec と呼ばれ、次のようになります:
describe("pow", function() { it("raises to n-th power", function() { assert.equal(pow(2, 3), 8); }); }); 上記の通り、spec は三つの主要な構成要素を持っています:
describe("title", function() { ... })-
どのような機能について記述しているか。“ワーカー” –
itのブロック – をグループ化するために使用します。このケースでは、関数powについて記述しています。 it("title", function() { ... })-
itのtitleでは、特定のユースケースを人間が読めるように記述し、2番目の引数は、それをテストするための関数です。 assert.equal(value1, value2)-
もし実装が正しければ、
itブロック内のコードはエラーなく実行されるはずです。関数
assert.*はpowが期待通り動作するかをチェックするために使われます。ここではそのうちの1つ、assert.equalを使用しています。これは引数を比較し、等しくない場合にエラーを返します。ここではpow(2, 3)の結果が8と等しいかをチェックします。他のタイプの比較やチェックもありますので、後ほど紹介します。
この仕様は実行可能であり、実行されると it ブロック内で指定されたテストが実施されます。これについては後ほど見ていきます。
開発フロー
開発フローは通常このようになります:
- 最も基本的な機能のテストとともに、初期の spec が書かれます。
- 最初の実装が作成されます。
- 動作するかどうかを確認するため、テストフレームワークである Mocha (詳細は後述) を使用して spec を実行します。機能が完全ではない場合、エラーが表示されます。すべてが動作するまで修正を行います。
- これで、テスト付きの動作可能な初期の実装ができあがります。
- まだ実装ではサポートされていないであろうユースケースを、さらに spec に追加していきます。これによりテストは失敗し始めます。
- 3に戻り、テストのエラーが無くなるまで実装を更新します。
- 機能が完成するまで3〜6のステップを繰り返します。
上で分かる通り、開発は 反復 です。spec を書き、それを実装し、テストが通ることを確認し、さらにテストを書いて、それらが動作することを確認します。最終的に、動作する実装とテストができ上がります。
実践的なケースでこの開発フローをみていきましょう。
最初のステップはすでに完了です: pow の初期 spec を持っています。では、実装を行う前に、テストを実行するためのいくつかの JavaScript ライブラリを利用してそれらが動作することを見ててみましょう(テスト自体は失敗します)。
アクションの spec
このチュートリアルでは、テストのために次のJavaScriptライブラリを使います:
- Mocha – コアフレームワーク:
describeやitを含む共通のテスト関数と、テストを実行するメイン機能を提供します。 - Chai – 多くのアサーションを持つライブラリ。様々なアサーションを使う事ができますが、今は
assert.equalだけが必要です。 - Sinon – 関数をスパイしたり、組み込み関数をエミュレートしたりするライブラリで、後々必要となります。
これらのライブラリはブラウザとサーバサイド両方のテストで利用することができます。ここでは、ブラウザの場合について進めます。
それらのフレームワークと pow の spec の完全なHTMLページです:
<!DOCTYPE html> <html> <head> <!-- add mocha css, to show results --> <link rel="stylesheet" href="https://cdnjs.cloudflare.com/ajax/libs/mocha/3.2.0/mocha.css"> <!-- add mocha framework code --> <script src="https://cdnjs.cloudflare.com/ajax/libs/mocha/3.2.0/mocha.js"></script> <script> mocha.setup('bdd'); // minimal setup </script> <!-- add chai --> <script src="https://cdnjs.cloudflare.com/ajax/libs/chai/3.5.0/chai.js"></script> <script> // chai has a lot of stuff, let's make assert global let assert = chai.assert; </script> </head> <body> <script> function pow(x, n) { /* function code is to be written, empty now */ } </script> <!-- the script with tests (describe, it...) --> <script src="test.js"></script> <!-- the element with id="mocha" will contain test results --> <div id="mocha"></div> <!-- run tests! --> <script> mocha.run(); </script> </body> </html> ページは4つのパートに分かれています:
<head>– テストのためのサードパーティーのライブラリやスタイルの追加- テストするための関数の
<script>、このケースでは –powのコードです。 - テスト – 我々のケースでは、上にあった
describe("pow", ...)を持つ外部スクリプトtest.js。 - Mocha が結果を出力するために、HTML要素
<div id="mocha">が使われます。 - テストはコマンド
mocha.run()で開始されます。
結果:
現時点ではテストは失敗しエラーが起きます。それは当然です: pow のコードは空なので、pow(2, 3) は 8 ではなく undefined を返します。
なお、将来的には、karma のような高度なテストランナーがあることを心に留めておきましょう。一般的には、それらを利用することで多数の異なるテストのセットアップは問題にはなりません。
初期の実装
テストを通すため、pow を実装しましょう:
function pow() { return 8; // :) we cheat! } おぉ、これでも動作します!
spec を改善する
私たちがしたことは完全にずるです。関数は動作しません: pow(3, 4) は正しくない結果を返します。がテストは通ります。
…テストは通るが、関数は誤った動作するという状況は非常に典型的で、実践で起こり得ます。私たちの仕様は不完全であり、ユースケースの追加が必要です。
pow(3, 4) = 81 を確認するテストを追加しましょう。
ここで、テストを整理するために、次のいずれかの方法を選ぶことができます:
-
最初の方法は – 同じ
itにassertを追加します:describe("pow", function() { it("raises to n-th power", function() { assert.equal(pow(2, 3), 8); assert.equal(pow(3, 4), 81); }); }); -
2つ目は – 2つのテストを作ります:
describe("pow", function() { it("2 raised to power 3 is 8", function() { assert.equal(pow(2, 3), 8); }); it("3 raised to power 3 is 27", function() { assert.equal(pow(3, 3), 27); }); });
主な違いは、assert がエラーをトリガするとき、 it ブロックは直ちに終了することです。そのため、最初の方法では、最初の assert が失敗すると2つ目の assert の結果は見られません。
テストを分けて作ると、起こっていることに関してより多くの情報を得ることができるので、2つ目の方法のほうが良いでしょう。
それに加えて、従うべきもう一つのルールがあります。
1つのテストは1つのことを確認します
もしテストを見て、2つの独立したチェックがその中にある場合、分割して2つのシンプルなテストにするほうが良いでしょう。
なので、2つ目の方法で進めていきましょう。
結果:
予想通り、2つ目のテストは失敗しました。もちろん、assert が 27 を期待しているにもかかわらず、関数が常に 8 を返すためです。
実装を改善する
テストを通すため、より実際のコードを書きましょう:
function pow(x, n) { let result = 1; for (let i = 0; i < n; i++) { result *= x; } return result; } 関数が上手く動作することを確認するために、より多くの値をテストしてみましょう。it ブロックを手動で書く代わりに、for で生成することもできます:
describe("pow", function() { function makeTest(x) { let expected = x * x * x; it(`${x} in the power 3 is ${expected}`, function() { assert.equal(pow(x, 3), expected); }); } for (let x = 1; x <= 5; x++) { makeTest(x); } }); 結果:
ネストされた記述
私たちはさらに多くのテストを追加します。しかしその前にヘルパー関数 makeTest と for が一緒にグループ化されるべきことに注意しましょう。他のテストでは makeTest は不要であり、for の中でのみ必要です: それらの共通のタスクは、与えられた累乗で pow がどのようになるかを確認することです。
グループ化は、 describe をネストすることでできます:
describe("pow", function() { describe("raises x to power n", function() { function makeTest(x) { let expected = x * x * x; it(`${x} in the power 3 is ${expected}`, function() { assert.equal(pow(x, 3), expected); }); } for (let x = 1; x <= 5; x++) { makeTest(x); } }); // ... より多くのテストが続きます。 descript と it 両方が追加されます }); ネストされた describe はテストの新しい “サブグループ” を定義します。出力では、タイトル付けされたインデントとして見ることが出来ます:
今後も自身のヘルパー関数と一緒に、トップ階層により多くの it や describe を追加することができます。また、それらに makeTest は見えません。
before/after と beforeEach/afterEachテストを実行する前後に実行する before/after 関数を設定することができます。また すべての it の前後で実行する beforeEach/afterEach もあります。
例:
describe("test", function() { before(() => alert("Testing started – before all tests")); after(() => alert("Testing finished – after all tests")); beforeEach(() => alert("Before a test – enter a test")); afterEach(() => alert("After a test – exit a test")); it('test 1', () => alert(1)); it('test 2', () => alert(2)); }); 実行順序はこうなります:
Testing started – before all tests (before) Before a test – enter a test (beforeEach) 1 After a test – exit a test (afterEach) Before a test – enter a test (beforeEach) 2 After a test – exit a test (afterEach) Testing finished – after all tests (after) 通常、beforeEach/afterEach (before/each) は初期化の実行のために使われ、カウンタをゼロにしたり、テストの間で何かをするときに使われます。
spec を拡張する
pow の基本的な機能は完成です。開発の最初のイテレーションが完了しました。祝杯を挙げた後は、さらに改良を重ねていきましょう。
前述の通り、関数 pow(x, n) は正の整数値 nを扱うことを意図しています。
数学的なエラーを示す方法として、JavaScript関数は通常 NaN を返します。n の不正値を同じようにしましょう。
spec へ、その振る舞いを追加しましょう。:
describe("pow", function() { // ... it("for negative n the result is NaN", function() { assert.isNaN(pow(2, -1)); }); it("for non-integer n the result is NaN", function() { assert.isNaN(pow(2, 1.5)); }); }); 新しいテストの結果:
現時点の実装ではサポートされていないので、新たに追加されたテストは失敗します。それが BDD の仕組みです: 最初に失敗するテストを書き、次にそれらのための実装を作ります。
assert.isNaN のアサーションに注目してください: NaN のチェックです。
Chai には他にもアサーションがあります、例えば:
assert.equal(value1, value2)– 等しいかどうかをチェックしますvalue1 == value2.assert.strictEqual(value1, value2)– 厳密な等価チェックをしますvalue1 === value2.assert.notEqual,assert.notStrictEqual– 上と逆のチェックをします。assert.isTrue(value)–value === trueをチェックします。assert.isFalse(value)–value === falseをチェックします。- …docsに完全なリストがあります。
従って、pow にいくつかの行を追加します:
function pow(x, n) { if (n < 0) return NaN; if (Math.round(n) != n) return NaN; let result = 1; for (let i = 0; i < n; i++) { result *= x; } return result; } これで動作し、すべてのテストが通ります:
サマリ
BDDでは、spec が最初で実装はそれに従います。最終的に spec とコードを持つ事になります。
spec は3つの方法で使うことが出来ます:
- テスト コードが正しく動作するこをと保証します。
- ドキュメント –
describeとitのタイトルはその関数がすることを示します。 - 例 – テストは実際には関数がどのように使われるのかを見せる、動作するサンプルです。
spec があると、安全に改善、変更、スクラッチで関数の書き直しですらもでき、それがまだ正しく動くことを確認することができます。
関数が多くの場所で使われる場合、大規模なプロジェクトではそれが特に重要になります。このような関数を変更するとき、それを使うすべての箇所で正しく動作するかを手動で確認する方法はありません。
テストがない場合、2つの道があります:
- たとえ何が起ころうと関係なく、変更(修正)を行います。そして、恐らく手動では何かをチェックしそこない、ユーザがバグに遭遇します。
- もしくは、エラーへの罰が厳しい場合、人々はこのような関数を変更することを恐れるようになります。そして関数は古くなり、クモの巣が生い茂り誰もその中に入りたくなくなります。それは良いことではありません。
自動テストコードはその反対です!
もしプロジェクトがテストでカバーされていれば、このような問題はありません。私たちはテストを走らせ、あっという間に多くの確認結果を知ることができます。
さらに、よくテストされたコードは、より良いアーキテクチャを持っています。
もちろん、自動テストされたコードは修正や改善が容易だからです。が、他の理由もあります。
テストを書くためには、すべての関数が明確に記述されたタスク、よく定義された入力と出力を持つようにコードを編成する必要があります。それは最初からよいアーキテクチャであることを意味します。
実際にはそう簡単なことではありません。どのような挙動をするべきかまだ明確でない場合、実際のコードの前に spec を書くのが難しいときもあります。しかし、一般的には、テストを書くことは開発を速く、より安定させます。
チュートリアルの後半では、テストが組み込まれた多くのタスクに出会います。なのでより実用的な例が見られるでしょう。
テストを書くには、JavaScript に関する十分な知識が必要です。しかし、まだそれらを学び始めたばかりなので、いま時点ではテストを書くのは必須ではありませんが、このチャプターよりも少し複雑な例であってもすでテストを読むことができるはずです。
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